遺産分割は、遺言書の有無によって大きく2つに分けることができます。
遺言書がない場合、または、あっても遺産分割について具体的に記載されていない場合は、民法900条に定める法定相続分の規定に従って遺産が相続される(法定相続)、または、相続人全員で協議をして、遺産分割を決定していきます(遺産分割協議)。
一方で遺言書がある場合、遺言書に示された被相続人の意思が尊重され、その意思に基づいて、あらかじめ具体的に決めておいた通りに財産分割が行われます(指定分割)。
しかし、遺言書の内容によっては、相続人が納得いかないような場合もあるかもしれません
ここでは、遺言書がある場合の遺産分割の可否について説明します。
■遺言と異なる遺産分割はできるのか
・遺言と異なる遺産分割
遺言とは、被相続人の生前最後の意思表示であり、相続人はこれに束縛されることになります。
もっとも、相続人全員が遺言の内容に反対する場合は、これに束縛される必要はなくなり、相続人の間で協議を行い、相続人全員が納得のいく遺産分割を行うことができます。
しかしながら、遺言書で遺言執行者が選任されている場合はこの限りではありません。
遺言執行者は、遺言者執行者は相続財産についての管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有しており(民法1012条1項)、
また、相続人は遺言執行者の遺言執行を妨げることはできません(民法1013条)。
したがって、相続人全員の合意があったとしても、遺言執行者の了承のないままで遺言書と異なる遺産分割を行うことはできません。
なお、遺言の内容が相続人に相続させるのでなく、第三者に遺贈をする場合は、加えて、その第三者の同意がない限りは、相続人全員が遺産分割を行っても、無効となります。
■遺贈は放棄できるのか
・贈与の放棄
遺贈の場合、生前贈与とは異なり、遺言者は受遺者の事前の同意無しに、独自に行うことができます。
もっとも、受遺者は、遺贈による相続財産の贈与を放棄(拒否)することができます(民法986条)。
・包括遺贈の場合
包括受遺者の場合、相続人と同一の権利義務を有することになるため(民法990条)、遺贈の放棄についても、相続人の相続放棄と同じ方法によって放棄することができます(民法915条)。
すなわち、遺贈を放棄するためには、原則として、自己のために相続が開始したことを知ってから3か月以内に家庭裁判所に申立てを行わなければなりません。
特定遺贈の場合
特定遺贈の場合、受遺者はいつでも遺贈を放棄することができます。
放棄した場合、遡及的に遺言者が亡くなった時から遺贈を受けなかったこととされます(民法986条)。
もっとも、これでは他の相続人等の財産関係がいつまでも安定しないことから、他の相続人等は相当の期間を定めて、遺贈の承認または放棄をするよう特定受遺者に催告することができます(民法987条)。
パル法律事務所では、東京都武蔵野市を中心に、法定相続分、代表相続人、相続持分などといった様々な遺産や相続に関する相談を承っております。
お悩みの際にはお気軽に当事務所までご相談ください。
遺言相続による遺産分割
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